みずほ銀行システム統合全貌|スカイツリー7本分の建築費に匹敵

タイトル(本)

「みずほ銀行システム統合、苦闘の19年史 史上最大のITプロジェクト「3度目の正直」」著者:日経コンピュータ、山端 宏実、岡部 一詩、中田 敦、大和田 尚孝、谷島 宣之

 

概要

みずほ銀行システム統合とは?

みずほファイナンシャルグループのみずほ銀行における「勘定系システム」の刷新と統合のことです。2011年6月に開始し、2019年7月に完了しました。勘定系システムとは、銀行業務のメインの預金・融資・振込などをおこなっており、システムが使えなくなると銀行の業務が全て止まり、ATM・銀行窓口・インターネットバンキングも使えなくなります。

 

システム統合のきっかけは?

2002年4月、2011年3月の2度にわたって大規模システム障害をおこしたためです。そのため、全国で振込遅延やATMサービス停止が発生しています。障害の原因の1つが、1980年代末から使っていた勘定系システムの老朽化でした。この事実を受けて、2011年6月から本格的に勘定系システムの刷新と、それまでみずほ銀行・みずほコーポレート銀行・みずほ銀行で別々に運用していた勘定系の1本化が始まりました。

 

新勘定系システム「MINORI」のシステム統合のすごさとは?

システム開発者やシステム統合経験者からすると、以下の3点がすごいと考えます。

 

(1)開発規模

・約8年かけた開発プロジェクト

・開発費4500億円半ば(東京スカイツリーの建設費が約650億円なので7本分の開発費)

・35万人月(1人が1ヶ月作業すると1人月)

・参加ベンダー1000社(日本のITベンダーの約1割)

 

⇒正直、この規模のプロジェクト管理がどういったものになるのかピンとこないです。また、世間一般的には当初のスケジュール通りにいかないと責められますが、システム開発を担当している人ならこの規模のシステム開発が当初計画したスケジュール通りに進めるのは至難の業だと分かるはずです。

 

(2)勘定系システムのシステム統合方法

・勘定系システムを一から全面再構築

 

⇒銀行で勘定系システムの全面再構築の例はないらしいです。基本はどちらかの勘定系システムに片寄せするようです。

 

(3)要件定義の考え方

・「AS IS」の要件定義の全面的禁止(旧システムの要件や現状の業務フローの踏襲禁止。)

 

⇒みずほファイナンシャルグループの最高情報責任者(CIO)が、過去の苦い経験から、要件定義においてユーザ部門が「今のままでいい」の態度を取るのが最悪と学んだと語っています。過去のシステム開発で「AS IS」の要件定義にした結果、昔の要件定義の振り返りや、現行の業務フローを情報システム部門が分析して要件として定義するのに時間がかかったとのことです。今回はユーザ部門が銀行業務を棚卸して、あるべき業務フローを考えて、そこからシステムを作ったとのことです。そのため、どちらかの業務に片寄せや、足して2で割るといったことも禁止されています。

 

通常、システム統合の課題とて、以下があると考えます。

・現行の業務を踏襲すれば、少なくとも既存のお客様はこれまで通り使えるので影響ないと考える。

・あるべき業務フローを考えるための検討期間が短いため、現行の業務に踏襲しようと考える。

・あるべき業務フローを考えて、現行機能を廃止すると、お客様からのこれまで使えていたのに何故使えなくなったのかというクレームがくるので、現行機能は残そうと考える。

 

そのため、過去から続く大規模システムがあるシステム統合で、あるべき業務フローからシステムを作るというのは画期的というか、決断したリーダーがすごいです。

 

この本で分かること

以下のことが分かります。あらゆる業界のシステム開発担当者、過去システムの刷新の担当者、企業間のシステム統合の担当者の学びになる本だと思います。

 

・勘定系システム統合全貌。2度の大規模システム障害を起こしてから、何を学び、どのように内部を立て直して、勘定系システム統合を成功に導いたか。

・2002年4月の1回目のシステム障害全貌

・2011年3月の2回目のシステム障害全貌

 

目次 

はじめに

第1部 IT業界のサグラダファミリア、ついに完成す

第1章 三十五万人月、四千億円台半ば、巨大プロジェクトはこうして始まった

第2章 さらば八〇年代、新システム「MINORI」の全貌

第3章 参加ベンダー千社、驚愕のプロジェクト管理

第4章 緊張と重圧、一年がかりのシステム移行

第5章 次の課題はデジタル変革

第6章 「進退を賭けて指揮した」

    〔みずほフィナンシャルグループ 坂井辰史社長 インタビュー〕

第2部 震災直後、「またか」の大規模障害

第7章 検証、混迷の十日間

第8章 重なった三十の不手際

第9章 一年をかけた再発防止策

第3部 合併直後、「まさか」の大規模障害

第10章 現場任せが諸悪の根源

第11章 無理なシステム統合計画を立案

第12章 大混乱の二〇〇二年四月

おわりに

 

関連書籍

「システム統合の「正攻法」」著者:大和田 尚孝

みずほ銀行システム統合で2002年4月の1回目のシステム障害後、UFJ銀行と東京三菱銀行のシステム統合が発表され、大きな障害なく、2008年12月14日に完遂させたことで話題になりました。システム統合は2段階に分けて行われ、プロジェクト「Day1」が東京三菱銀行とUFJ銀行の勘定系システムの相互接続、プロジェクト「Day2」が2つのシステムの完全一本化になります。

 

プロジェクト「Day2」の開発規模は、みずほ銀行のシステム統合に負けず劣らず、すごいです。これだけの大規模システム開発案件にも関わらず、計画通り完遂してます。

・開発工数は11万人月

・開発期間は3年弱

・開発費は2500億円

・6000人の技術者導入

 

この本は三菱東京UFJ銀行のシステム統合プロジェクト「Day2」の全貌が分かる本です。プロジェクトマネジメントやシステム開発における取り組みや創意工夫が書かれています。

システム統合の「正攻法」(日経BP Next ICT選書)

システム統合の「正攻法」(日経BP Next ICT選書)

  • 作者:大和田 尚孝
  • 出版社/メーカー: 日経BP
  • 発売日: 2014/08/23
  • メディア: Kindle版
 

第1章 システム統合の全体像

第2章 プロジェクト準備

第3章 管理フレームワーク

第4章 設計・開発計画

第5章 士気向上策

第6章 利用部門の支援

第7章 テスト・移行計画

第8章 完遂への10か条

第9章 経営層のリーダーシップ

第10章 IT企業の奮闘

付録1 キーワード解説

付録2 資料編

 

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